楽音会
リレーエッセイ 「今、思うこと」

 日本の音、音楽を愛し振興を目指す皆様向けに各界の先生方より語っていただきます。
 楽音会理事長の黒河内茂からスタートしたこのリレーエッセイをお楽しみ下さい。

第1回、「今、思うこと」 楽音会理事長 黒河内 茂

 
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 第1回、「今、思うこと」 楽音会理事長 黒河内 茂 :2008年6月1日発行
 
 地球温暖化の問題は、伝統音楽にとっても深刻な問題である…と言うと、一体何のことだと思われるだろう。実際直接の関係は無い。実は先日、温暖化の影響で北極の氷が大幅に減少し北極熊が絶滅の危機にさらされているということを知った。ところがサッカーの中田英寿がスウェーデンのラップランドにある氷のホテルへ泊まるという番組を見ていて大きな衝撃を受けた。中田は「僕がここにきた理由は…温暖化の影響で営業期間が年々短くなっているって知ったからなんだ。」と現地の人たちに問いかけるのだが、「あまり実感はないわね。まだ寒いもん…」
 確かに、一般論として伝えられるニュースと実際にその渦中で生活している人達との受け止め方にはかなりの温度差があるのだろう。長々と温暖化の話を書いたのは、これらの番組を見ていて強く感じたのは、日本の伝統音楽の「危機」である。かつては私たちの生活の中の一部であり、日常の中に様々に存在していた伝統音楽が、急速な勢いで消えつつある。それらの音楽に触れようとすると、自らがそれなりに恣意的に努力をしなければならない。また新しく習おうとする人達も減少しているという。
 ところが一般論としてこの様な話をすると、伝統音楽を担っている誰しもが「何か対策を…」となるのだが、では具体的に自らが「何をするのか…」との話になると「でも自分の所はそれほど困っていないので…」との話になってしまう。鳥瞰的に見ることと、それを自らの問題として捕らえることとには距離感があるようである。数年前に、学校教育の中に和楽器が取り上げられると大きな話題となったことがあったが、はたしてその後どの様になっているのだろうか。如何に素晴らしい仕組みが作られたとしても、実際にそれを担ってゆく人達が変わらなければ中々定着はしないであろう。伝統音楽が今日のような状況になったのには、無論様々な理由があるだろう。学校教育、多様な娯楽の登場等々数えれば切りがない。しかしその大きな理由の一つとして、伝統音楽を担っている人々自身の問題がある様に思っている。新しい時代の流れの中で旧態依然とした仕組みの上に乗ったまま何の改革もせずに今日まで来てしまったのではないだろうか。真の改革とは、誰かに何かをしてもらうものではなく何よりも「先ず自分が変わる…」ことではないだろうか。伝統音楽を、北極熊のようにしてはならないのだ。
 
 

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